行政書士の三浦です。
高齢化社会・少子化・過疎化・国際競争力など様々な要因に起因し、外国人労働者の数は増加傾向にあります。
平成28年10月末時点では外国人労働者数が108万3769人と、100万人を超える外国人が日本で就労しています。
そちらに伴い、外国人の入国審査や滞在ビザ等、多くの知識が企業に求められるようになりました。
これからの日本の労働力を語る上で欠かすことができない「外国人労働者」を合法に、なおかつ企業・労働者双方にとって有益に受け入れるための基本となる、「外国人が日本に入国するための要件」を入管法に沿ってご紹介したいと思います。
外国人が日本に入国するための要件(入管法第3条)
外国人が日本に入国する際には下記の要件を満たしている必要があります。
- 有効な旅券(パスポート)を所持している者
- 乗員(艦船・列車・航空機等で勤務している者)又は日本にて乗員となる者
なお2の場合は、有効な旅券(パスポート)を所持していなくても、有効な乗員手帳を所持することで日本に入国することが可能となります。
しかし、どちらも、「入国審査官から上陸許可の証印又は上陸の許可」を所持していない場合は日本に入国することはできません。
上記に反した場合には、入管法第24条第1号(不法入国)、入管法第70条第1項第1号違反となり、刑事罰の対象となります。
外国人が日本に入国するための要件(入管法第6条)
日本に入国しようとする外国人は、入国審査官の「上陸審査」「旅券に上陸許可の証印」を受けることで合法的に日本に入国することが可能となります。(法務省令)
有効な旅券(パスポート)、有効な乗員手帳を所持していても入国審査官の「上陸審査」「旅券に上陸許可の証印」を受けなくては、不法入国に該当し、「退去強制」「刑事罰」の対象となってしまいます。
外国人が合法的に日本に入国するためには下記の条件を満たす必要があります。(出入国港にて個人識別情報(指紋及び顔写真)の提供が必要です)
①有効な旅券及び日本国領事官等が発給した有効な査証を所持していること
②申請に係る活動(我が国で行おうとする活動)が偽りのものでないこと
③我が国で行おうとする活動が,入管法に定める在留資格のいずれかに該当すること
また,上陸許可基準のある在留資格については,その基準に適合すること④滞在予定期間が,在留期間を定めた施行規則の規定に適合すること
⑤入管法第5条に定める上陸拒否事由に該当しないこと
「個人識別情報の提供を拒否」「入国審査官が入国を拒否」した場合は、特別審理官(法務大臣から指定を受けた入国審査官)による口頭審理へと移行します。
口頭審理にて入国が許可されれば、直ちに日本へ入国が可能となります。しかし、口頭審理にて入国に適しないとされた外国人は「日本からの退去」or「法務大臣への異議申し立て」を選択します。
「法務大臣への異議申し立て」が行われた場合は、法務大臣は特別審理官の口頭審理の「理由の有無」を検討します。
異議申し立てに「理由あり」とされた場合は入国が許可され、異議申し立てに「理由なし」とされた場合は「日本からの退去」を求められます。
このように「入国審査官」「特別審理官」「法務大臣」と、外国人に対して十分な審査・主張・立証の機会が与えられている制度となっています。
外国人労働者をリスク要因にしないために
企業様が「外国人労働者」を雇用する際には、入管法に沿った受け入れが必須となります。
外国人労働者には「上陸許可の有無」「在留資格の有無」等と併せて、「就労態度」「日本文化への適用」「言葉の壁」など企業にとってリスクになり得る要因があることは事実です。
また、企業様が「外国人労働者」に対する管理を怠っていた場合には、「不法就労助長罪」など企業様が罪に問われてしまう可能性も秘めています。
外国人労働者の就労を助長した者は、刑事責任を問われ3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に問われてしまうためです。
しかし、優秀な外国人材を受け入れられることができれば、多くのメリットがあることも確かです。外国人労働者をリスク要因としてしまわないためにも、企業様の健全な発展のためにも入管法に沿った受け入れが必要になります。
外国人労働者受け入れ前には、入管業務に詳しい隣接法律専門職(弁護士・行政書士等)に相談し、受け入れ後のリスクを軽減しておくことで、不要な心配を取り除くことができるだけでなく、健全な経営を目指すことができるかと思われます。